カリウム40とセシウム134, セシウム137の同じ所と違う所

「外部被曝に関しては人工放射線も自然放射線も同様のリスクで、東葛ホットスポットのレベルは世界的に見れば許容範囲だろう(マイクロホットスポットには気をつける!)、ただし内部被曝に関しては人工放射能と自然放射能は全く異なり外部被曝よりもはるかに危険。気を付けなくてはいけない。」これが以前からの私の(このブログの)スタンスです。

ではセシウム134、セシウム137の内部被曝とよく比較される自然界に元から存在する放射性カリウム40はセシウム134, 137とどこが同じでどこが違うのか、危険性はどのように判断できるのか。前からずっと疑問だったのですが今回まとめて勉強してみました。

まず、それぞれの核種の基礎知識から。基本的に以下からの情報の抜粋になっています。

セシウム134(人工放射能)

  • 半減期
    • 2.06年
  • 崩壊方式
    • β崩壊によりバリウム134となる(99.9997%)。この時に0.089~0.658MeV のβ線と0.563~1.365MeVの複数のγ線を出す。
    • 軌道電子を捕獲してキセノン134となる(0.0003%)。
  • 化学的、生物的性質
    • 体内摂取後の挙動はカリウムと似ている。
    • 体内に入ると全身に分布する。
    • 約10%はすぐに排出される。
    • 約90%は100日以上滞留する。
  • 外部被曝
    • 1mの距離に100万ベクレルの小さな線源があるとγ線により1日に0.0055mSv外部被曝する。
  • 内部被曝
    • β線が問題になる。
    • 10,000ベクレルを経口摂取した時の実効線量は0.19ミリシーベルトになる。
  • 体内にある量
    • 成人の体内にあるセシウムの量は1.5㎎。カリウムの140gの約10万分の1。

セシウム137(人工放射能)

  • 半減期
    • 30.1年
  • 崩壊方式
    • 1.18MeVのβ線を放出してバリウム137となる。
    • 94.4%は0.514MeV のβ線を放出してバリウム137mを経由する。
    • バリウム137mから0.662MeVのγ線が放出される。
  • 化学的、生物的性質
    • セシウム134と同じ。
  • 外部被曝
    • 1mの距離に100万ベクレルの小さな線源があるとγ線により1日に0.0019mSv外部被曝する。
  • 内部被曝
    • β線が問題になる。
    • 10,000ベクレルを経口摂取した時の実効線量は0.13ミリシーベルトになる。
  • 体内にある量
    • 成人の体内にあるセシウムの量は1.5㎎。カリウムの140gの約10万分の1。

カリウム40(自然放射能)

  • 半減期
    • 12.8億年
  • 崩壊方式
    • 1.31MeV のβ線を放出してカルシウム40となる(89.3%)。
    • 軌道電子を捕獲してアルゴン40となる(10.7%)。この時に1.46MeVのγ線が放出される。
  • 存在
    • 地球創生時に生成された。
    • 同位体存在比は0.0117%で、カリウム1gに30.4ベクレルのカリウム40が入っている。
    • 岩石中に多量に含まれる。玄武岩は262Bq/Kg程度。
    • 白米は33Bq/Kg程度。
    • 成人体内に140g(4000Bq)存在する。体内に常に同じ量存在する。
    • 1日の摂取量は3.3g
  • 化学的、生物的性質
    • 全身に広く分布
    • 生物学的半減期は30日とされている
  • 外部被曝
    • 1㎏のカリウムから1mの距離における年間線量は0.0055ミリシーベルト。
  • 内部被曝
    • 10,000ベクレルを経口摂取した時の実効線量は0.062ミリシーベルト
    • 生殖腺や他の柔組織に対する年間線量は0.18ミリシーベルト、骨に対しては0.14ミリシーベルト。

β線の内部被曝の危険性について

私は今まで「人工放射性物質を呼吸や飲食によって体内に取り込んでしまい、それによってβ線で内部被曝をすることが非常に危険」という認識だったのですが、こうして調べてみると自然放射能のカリウム40によって生物は誕生以来ずっと外部、内部被曝をしてきたのですね。

成人の体内に約4000Bqある、ということなので、全身にたいして1秒間に4000発のβ線をずーっと受け続けている…というのは結構衝撃的な話ですね。生命ってすごいです・・・。

(余談ですが、このように体内のカリウム40の量がある程度一定であるため、ホールボディカウンタの検査結果でカリウムのベクレル数が4000程度かどうかを見れば計測結果が信頼できるものなのかそうでないのかがわかることになるそうです。)

一方セシウム、ストロンチウムなどは本来体内には存在しない・・・のですが、大気圏中核実験、チェルノブイリ事故等の影響で環境中にも体内にも微量がずっと存在していた・・・というのが現実で、そこからも内部被曝をしています。

カリウムの被曝量から危険性を判断する

カリウムは基本的に体内で一定量に保たれています。摂取すればその分排出される感じですね。でも、一時的に多くなる時も少なくなる時ももちろんあります。そのゆらぎによる被曝量の変化の大きさとセシウムを摂取した際の被曝量との関係を見ればある程度危険性の判断ができる・・・と主張されている方がいます。

放射性Csを摂取した内部被曝量をK40の摂取量に換算して安全性評価する話です。例えば10Bq程度のCs摂取はバナナ250g程度食べた時のK40による被曝の上乗せ分と考える。それなら気にしないでいいと判断可能。@Mihoko_Nojiri @J_TphotoSun Sep 25 07:58:36 via web

セシウムがどの程度蓄積されるか

一方で、セシウムはその半減期の長さ(約90%は100日以上滞留する)から微量でも蓄積されていってしまうという危険性があります。体内のセシウムの量をシュミレートしてくださっている方がいます。

上記は半減期を110日とし、体重70Kgの人が100Bq/Kgの食品を一度に200g(20Bq)食べる、という前提のグラフです。一度の摂取は微量でも体内に蓄積されていってしまう傾向がよく現れており、ここがカリウムとは決定的に違うところです。

3日に1回で見ると20Bq/Kgとなっており70Kgなので全身で1400Bq。この想定ではカリウムの4000Bqと比べるとそれよりは少ない値となります。少ないとはいえ上乗せになっているわけで・・・、これを多いと見るか、少ないと見るかは意見が分かれるところだと思います。

ICRP PUBLICATION 111. Application of the Commission’s Recommendations to the Protection of People Living in Long-term Contaminated Areas after a Nuclear Accident or a Radiation Emergency

上記はICRPの文書からの引用です。1日10ベクレル程度の摂取で体内に1400Bq程度までたまる事になっています。ICRPの実効線量係数を信じるならばセシウム134の経口摂取(1.9E-5[mSv/Bq])とすると1.9E-5×10×365=0.06935mSvの被曝ということになります。このくらいの被曝で収まるなら私なら許容できるかな、という感じです。カリウムからの被曝と比較してもそんなにおかしな値とは思いません。

成人の1日の平均摂取量は、飲料水1.65ℓ、牛乳・乳製品200g、野菜類600g, 肉・卵・魚500gだそうです。

水はかなり綺麗になっているので、それ以外で合計1.3kgを毎日食べるとすると、10Bq/Kgをちょっと下回る程度の汚染なら1日10Bq程度、ということになります。10Bq/Kgというと、ほとんどの検査の定量下限値よりも下になってしまいますので、やっぱりNDの食べ物しか食べたくないなぁということになります。一方大地を守る会の定量下限値は10Bq/Kg程度ですので、大地を守る会の放射能不検出カテゴリのものであれば福島産のものでも食べてOKというように考えることができます。(我が家は食べてます。)

過去どの程度のセシウムを食べていたか

(対数をやめて,リニアなグラフで)日本人は一日何Bqのセシウムを食べていたか:1960年代-2009年まで

@hayanoさんのツイートより。過去の日本の食事では5Bq以下しか摂取していなかったようですね。このくらいまで減らせれば過去の実績からもそれなりに大丈夫といえそうですね。放射能の影響を気にされる方は5Bq/dayあたりを目標におくのがよいような気もします。

いや、もっと危険性があるでしょう、という情報

ここまで書いてきたことは、そんなに変なことは書いていないつもりですが、結構「安全派」の考えになっていると思います。もっと危険性があるのでは、という情報は多数ありますので、それぞれ自分で確認し、独自の判断基準を持つことが必要だと思われます。

例えば以下のあたりは読んでおくことをお勧めします。

結論めいたもの

結論めいたものとしては結局無駄な被曝は避けたほうがいいので

  • 食材の産地を選ぶ
  • きちんと検査された食材を選ぶ

ということしかなく、カリウムとの比較なんてするまでもありません。そして、現在の汚染レベルであればきちんと選べば比較的安心できるレベルの被曝で抑えられそうだ、というように私は解釈しています。(問題は給食などの強制的に食べさせられるものですね。)

ただ、極端に被曝を恐れすぎて心配する必要がないことに心配してしまうようでは心が持ちませんので、こういうことも知識としては抑えておき、どうしてもしなくてはいけない(or したい)外食の時には無駄に心配しすぎずに食事を楽しめるようにしたいですね。心配する、しないで被曝量が変わることはありませんので。